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當我深入片中的情節裡,旁白的磁性聲音深深地吸引著,


用心地靜靜聆聽.............啊!淚水湧入心頭的美麗文章,


真的...真的.....感受到了



小島友子への七つのラブレター (大好評映画『海角7号』より)


 


1


 


1945年、十二月二十五日。


友子。


太陽がすっかり海に沈んだ。


これで、本当に台湾島が見えなくなってしまった。


君はまだ、あそこに立っているのかい?


 


2


 


友子。


許しておくれ、この臆病な僕を。


二人のことを、決して認めなかった僕を。


どんなふうに、君に惹かれるんだったっけ。


君は、髪型の規則も破るし、


よく僕を怒らせる子だったね。


 


友子。


君は意地っ張りで、


新しいもの好きで。


でも、


どうしようもない位、


君に恋をしてしまった。


だけど、


君がやっと卒業した時、


僕たちは戦争に敗れた。


僕は敗戦国の国民だ。


貴族の様に傲慢だった僕達は、


一瞬にして、


罪人の首枷を科せられた。


貧しい一教師の僕が、


どうして民族の罪を背負えよう?
時代の宿命は、時代の罪。 


そして、僕は貧しい教師に過ぎない。
君を愛していても、


諦めなければならなかった。


 


3


 


三日目。


どうして君の事を思わないでいられよう。


君は南国の眩しい太陽の下で、育った学生。
僕は、雪の舞う北から、海を渡ってきた教師。


僕らはこんなにも違うのに、


何故こうも惹かれ合うのか。


あの眩しい太陽が懐かしい。


熱い風が懐かしい。


まだ憶えているよ。君が赤蟻に腹を立てる様子。


笑っちゃいけないって分かってた。


でも、赤蟻を踏む様子がとても綺麗で、


不思議なステップを踏みながら、


踊っているようで、


怒った身振り、


激しく軽やかな笑い声。
友子。


その時、僕は恋に落ちたんだ。


 


4



強風が吹いて、


台湾と日本の間の海に、


僕を沈めてくれればいいのに。


そうすれば、臆病な自分を持て余さずに済む。


 


友子。


たった数日の航海で、


僕はすっかり老け込んでしまった。


潮風が連れて来る泣き声を聞いて、


甲板から離れたくない。


寝たくもない。


僕の心は決まった。


陸に着いたら、


一生海を見ないでおこう。



潮風よ。


何故泣き声を連れてやってくる?


人は、


愛して泣く、


嫁いで泣く、


子供を産んで泣く。


君の幸せな未来図を想像して、


涙が出そうになる。


でも、


僕の涙を潮風に吹かれて、


溢れる前に乾いてしまう。


涙を出さずに泣いて、


僕は、また老け込んだ。


憎らしい風。


憎らしい月の光。


憎らしい海。


 


十二月の海は、どこか怒っている。


恥辱と悔恨に耐え、


騒がしい揺れを伴いながら。
僕が向かっているのは、


故郷なのか。


それとも、


故郷を後にしているのか。



5



夕方、日本海に出た。


昼間は頭が割れそうに痛い。
今日は濃い霧が立ち込め、


昼間の間、僕の視界を遮った。


でも、


今は星がとても綺麗だ。


憶えてる?


君がまだ中学一年生だった頃。


天狗が月を食う農村の伝説を引っ張り出して、


月食の天文理論に挑戦したね。


君に教えておきたい理論がもう一つある。


君は、今見ている星の光が、


数億光年の彼方にある星から放たれてるって、知ってるかい?


うわぁ~、


数億光年前に放たれた光が、


今、僕達の目に届いているんだ。


数億年前、台湾と日本は、


一体どんな様子だったろう。


山は山、


海は海。


でも、そこには誰もいない。


僕は、星空が観たくなった。


虚ろやすいこんな世で、


永遠が観たくなったんだ。


 


台湾で、冬を越す雷魚の群れを見たよ。


僕はこの思いを一匹に託送。


漁師をしている君の父親が、捕まえてくれることを願って。
友子。


悲しい味がしても食べておくれ。


君には解るはず。


君を捨てたのではなく、


泣く泣く手放したということを。


皆が寝ている甲板で、


低く何度も繰り返す。


「捨てたのではなく、泣く泣く手放したんだ」っと。


 


夜が明けた。


でも、僕には関係ない。


どっち道、太陽は濃い霧を連れて来るだけだ。


夜明け前の恍惚の時、


年老いた君の優美な姿を見たよ。


僕は髪が薄くなり、目も垂れていた。


朝の霧が舞う雪のように僕の額の皺を覆い、


激しい太陽が君の黒髪を焼きつくした。


僕らの胸の中の最後の余熱は、


完全に冷め切った。
友子。


無能な僕を許しておくれ。


6



海上気温16度、


風速12節、


水深97メートル、


海鳥が少しずつ見えてきた。


明日の夜までには上陸する。


 


友子。


 


台湾のアルバムを君に残してきたよ。


お母さんの所に置いてある。


でも、一枚だけこっそりもらってきた。


君が海辺で泳いでいる写真。


写真の海は、風もなく、雨もなく、


そして、君が天国にいるみたいに笑っている。


君の未来が誰のものでも、君に似合う男なんいない。


美しい思い出は大事に持ってこようと思ったけど、


それで、


くれたのは、虚しさだけ、


思うのは君のことばかり。


あ!、虹だ。


虹の両端が海を越え、


僕と君を、結び付けてくれますように。


7


 


友子。


 


無事に上陸したよ。


七日間の航海で、


戦後の荒廃した土地に、


ようやく立てたというのに、


海が懐かしいんだ。


海はどうして、希望と絶望の両端にあるんだ。


これが、最後の手紙だ。


後で出しに行くよ。


海に拒まれた僕達の愛。


でも、想うだけなら許されるだろう?


友子。


僕の想いを受け取っておくれ。


そうすれば、


少しは僕を許すことが出来るだろう?


君は一生僕の心の中に居るよ。


結婚して、子供が出来ても、


人生の重要な分岐点に来るたび、


君の姿が浮かび上がる。
重い荷物を持って家出した君、


行き交う人混みの中に、


ポツンと佇む君。


お金を貯めて、やっと買った白のメリヤス帽をかぶって来たのは、


人混みの中で、君の存在を知らしめる為だったのかい?
見えたよ。


僕には見えたよ。
君は、静かに立っていた。
七月の激しい太陽のように、


それ以上、


直視する事は出来なかった。


君はそんなにも、静かに立っていた。


冷静に努めた心が、


一瞬熱くなった。


だけど、心の痛みを隠し、


心の声を呑み込んだ
僕は知っている。


思慕という低俗な言葉が、


太陽の下の影のように、


追えば逃げ、逃げれば追われ。一生。


 


友子。


 


自分の疚しさを最後の手紙に書いたよ。


君に会い、懺悔する代わりに、


こうしなければ、自分を許すことなど、少しもできなかった。
君を忘れたフリしよう。
の思い出が、渡り鳥のように、飛び去ったと思い込もう。
君の冬が終わり、春が始まったと思い込もう。
本当にそうだと思えるまで、必死に思い込もう。
そして、君が、永遠に幸せである事を、祈っています。


 


《 追記 》


 


ホテルの外、友子と明珠の最後の対話:


 


友子:私にも一本くれない?(タバコ)


   日本語が分からないなんて言わせないわよ。


明珠:今日終われば、私達みたいな、嫌なヤツなどの顔を見なくて済むのね。


友子:阿嘉のことを好きになっちゃったみたい。


   恋したことないわけじゃないけど、


   今回は何か変なのよ。


   自分でもよく分からない。


明珠:日本人に愛なんて分かれるの?


友子:ねえ、あなた。日本人に傷付けられたことでもあるの?


   何でそういう言い方するの?


   もしかして、


   大大の父親?


   きっと男にひどく傷付けられたものね。


明珠:特に、心は死んでるわ。


友子:私も心が死んでしまった恒春の少女を捜してるの。


   って言っても、彼女はもう80才位で、


   私と同じ『友子』と言うの。


   私、阿嘉の処でね。宛先の住所が見付からない日本の郵便物を見たの。


   正確に言うと、七つのラブレター。


   日本の爺さんが亡くなった後、娘さんが棚の中から見付けて、代わりに出してあげたそうよ。


   でも、残念ながら、


60年以上も前の旧い住所だから、誰も覚えてないらしくて。


私は、実は、こっそりその手紙の中味を読んでしまったの。


あれは、今まで見たことない程、


誠実で、美しい思いを老人の心もきっと治せる筈。


どうしたの?


明珠:手紙をこの住所に届けて。


   『友子』と言う少女はここにいるわ。


友子:どういうこと?


明珠:私のお婆ちゃんなの。


友子:だったら、あなたに手紙を渡すわ。


明珠:私、お婆ちゃんにとても酷いことをしたの。


   だから、もう相手にしてくれなくて。


   速く行って。


   速く行ってよ。


 


        七つのラブレターに添えた教師の娘の手紙は、下記のように書かれた。


 


友子 様へ、


 


私は、この手紙の持ち主の娘です。


この手紙は、父のタンスの中から出てきたものです。


父は、今年の一月に永眠致しました。


この手紙の一通一通を拝読しますと、


父と友子様のあんまりも切なく、心の絆の想いが沢山詰まったものでした。


今になって、お渡しすることが残念でなりません。


父の切ない心の中を、今友子様にお届け致します。


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